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Jリーグ秋春制元年:世界基準と移籍市場への挑戦

Jリーグの新たな秋春制は、史上最多の観客動員で幕を開け...そして移籍金とセルオン条項を巡る静かな戦いも始まっている。

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Shinya Kizaki
August 17, 2026

FOOTBIZ

2026年8月10日  ·  Shinya Kizaki

 Jリーグ史上初の「秋春制」は順調なスタートを切った。

 Jリーグは1993年の創立から一貫して「春秋制」(2月や3月などの春に開幕)を採用してきたが、2025年シーズンを最後にそれに区切りをつけ、2026-27シーズンから「秋春制」(8月に開幕)を採用した。

 8月7日に国立競技場で行われた開幕戦、横浜F・マリノス対鹿島アントラーズに63,960人が訪れ、Jリーグにおけるリーグ戦の最多入場者数を更新した。

 また、J1全体では第1節に10試合で30万4292人を記録し、J1の1節あたりにおける最多入場者数を更新。2026年北中米W杯で高まった日本国内のサッカー熱を、そのままJリーグにつなげることに成功した。

国立競技場で行われたFC東京対鹿島アントラーズ

2024年4月、国立競技場でのFC東京対鹿島アントラーズ。

Photo: Syced · CC0

 サッカーの本場・ヨーロッパでは「秋春制」が主流で、アジアでも2023-2024シーズンからアジアチャンピオンズリーグが「秋春制」へ切り替えられた。

 世界のメインストリームから取り残されないために、日本としても「秋春制」への変更が急務だったのである。ヨーロッパのリーグと勝負する条件がようやく整った。

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 Jリーグは新たに「世界基準」をスローガンに打ち出し、リーグ全体で経営力を上げようという気運が高まっている。

 その代表例が「移籍金収入アップ」だ。

 ここ約20年、Jリーグからヨーロッパのリーグへ移籍するに日本人選手が右肩上がりに増えており、日本代表の候補となりうる選手がヨーロッパに80人以上いると言われるようになった。

 2026年W杯の日本代表において、26人中23人がヨーロッパでプレーしている選手だった(Jリーグでプレーする選手はGKの大迫敬介と早川友基と、DFの長友佑都のみ)。間違いなく日本人選手のヨーロッパ移籍が、日本代表の力になっている。

パリ五輪スペイン戦を前に円陣を組むU-23日本代表

2024年パリ五輪、スペイン戦を前に円陣を組むU-23日本代表。

Photo: Kilyann Le Hen · CC BY 4.0 · crop

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 しかし、Jリーグにとっては手放しで喜べない部分がある。そのほとんどの移籍において、移籍金がゼロ、もしくは1億円前後にすぎないからだ。

 2010年代は1億円前後でも御の字とされていたが、2020年頃から不満の声があがるようになる。1億円前後でヨーロッパへ移籍した選手が、2、3年後に10億円前後の移籍金でステップアップするケースが目立つようになってきたからだ

 選手の証言によると、Jリーグのプレーレベルはベルギーやデンマークとそれほど大きく違わないと思われる。ところが選手を売却した際に得られる移籍金には大きな差があるのだ。

 いつまでも安く買い叩かれているわけにはいかない。今、多くのJクラブが移籍金相場を上げることにチャレンジしている。

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 日本側を勇気づける事例になったのが、高井幸大のトッテナム移籍だ。2025年夏、高井は川崎フロンターレから移籍金500万ポンド(当時のレードで約10億円)でトッテナムへ羽ばたいた。

 以前から他クラブからもオファーが届いていたが、フロンターレは移籍金にこだわって高井を簡単に手放さなかった。その強気の姿勢が、Jリーグにおける最高クラスの移籍金につながったのである。

天皇杯優勝を祝う川崎フロンターレの選手たち

2023年の天皇杯決勝後、優勝を祝う川崎フロンターレ。

Photo: RuinDig / Yuki Uchida · CC BY 4.0 · crop

 ただし、俯瞰した視点に立つと、その事例には反省点もあった。相場を超える移籍金を払えるのは、プレミアリーグ勢など世界トップクラスのクラブに限られてしまう。日本人選手がそこで出番を得るのは簡単ではない。

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 Jクラブもヨーロッパの移籍事情を学び、選手が将来別のクラブへ移籍する際の移籍金の一部を受け取れる「セルオンフィー」を設定することが一般的になってきた。割合の相場は数%から10%だ。

 「セルオンフィー」で収益をあげるためには、選手に移籍先で活躍してもらわなければならない。移籍する先のクラブのレベルも非常に大事である。

 選手のキャリアを最大化するためにも、クラブは「移籍金」と「移籍先のレベル」のバランスを考慮しなければならない。

 今夏にFC東京からスペイン1部・バレンシアへ400万ユーロで移籍した佐藤龍之介は、まさにそのバランスを考慮した事例だろう。バレンシアより高額の移籍金を提示したクラブがあったが、そのオファーを受けなかったと言われている。

 佐藤龍之介が期待通りにスペインでブレイクすれば、Jクラブにとって新たなお手本になるはずだ。

メスタージャで行われたバレンシア対バルセロナ

2023-24シーズン、メスタージャでのバレンシア対バルセロナ。

Photo: Anidae · CC BY-SA 4.0 · crop

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 Jクラブが移籍金に対して強気な姿勢を取るようになったことに対して、もちろんヨーロッパ側では反発がある。

 これまで多くの日本人選手を獲得してきたオランダ1部・NECナイメヘンのテクニカルダイレクター、カルロス・アルバースは「日本人選手の移籍金が適正価格より上がり、Jリーグの魅力が薄れつつある」と指摘する。

 だが、交渉に“闘い”はつきものだろう。「適正価格ではない」というクレームに屈していたら、いつまでも買い叩かれてしまう。

 シーズン移行を契機に、Jリーグ全体でさらに移籍金相場を上げるムーブメントを加速させていきたいところだ。

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